晴天の11月3日、朝10時。江戸川河口に屋形船が8隻並んだ。これから、江戸時代からつづく漁師文化の粋ともいうべき「投網の技」が披露されるのだ。本来は5月の開催予定だったが、東日本大震災のあとだったことから今年は中止としたものの、開催希望が多数寄せられ、この時期の開催になったと開会挨拶で述べられた。
司会役の小島一則副会長から紹介された三田豊一会長(東京東部漁業協同組合)が声高らかに開会を宣言。そして再び司会に......と思っていると、小島副会長はなんと小ぶりの漁船で「あみ弁」の屋形船に移動。投網の技は網を打つ人よりも船頭のほうに大事な役割があるとのことで、自ら屋形船を操船すべく移動したのだ。その甲斐あって「あみ弁」の投網は見事に決まった。
そんな主宰者の細やかな配慮もあって、次々と打たれる投網はどれもお見事、拍手喝采の連続。中には、代々漁師ではないのに投網に魅せられ修行を積んだというトラックの運転手さんも現れ、見事な網打ちを披露。こうなると一般参加者も「次は自分も」という気持ちになってくる。
投網が一段落してからは、船は東京湾へゆるりと屋形船の旅へ。屋形船ならではのご馳走となごやかな会話で、いずれの船上も楽しい時間が流れたことだろう。屋形船はすべて乗合だ。知り合いも、初めて会った人もすっかりうちとけ楽しくお酒をくみかわすのがこの投網まつりの楽しさだ。
そうこうするうちに再び投網漁が行われ、私の目の前で大きな魚を獲り上げたのはトラック運転手さん。再々、投網漁の面白さを堪能した。そして屋形船は一度乗ったら降りられない。同乗者とは船を下りるまで運命共同体。だからこそ、ゆっくりとした時間を楽しまないともったいない。というわけで、カラオケになった船もあったし、ひたすら投網を打ちつづけた船もあったようだ。いつしか時間が流れ、船も元の江戸川河口に戻り、お開きの時を迎えた。「投網漁に大満足。明日も元気にがんばろう」。そんな思いで船を降り、江戸川を後にしたのは、私だけではなかったと思う。
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